Lv.1
中学時代、全国的に小中学生の間でバス釣りが大流行し、俺の学年の男子は土井君とたっちゃん以外のほとんどの男子が釣りをしていた。

今の俺ですら「釣りってある程度お金をかけんとやってられんな。」と思うのに、中学生がよくやってたなと今となっては思う。
ましてや車もなかったのに自転車だけでよくやってたもんだ。

そんな中、あり合わせの釣具で無理矢理釣りをしている猛者も何名かいたが、その中でも一番酷かったのが印藤であった。
あろうことか、海釣り用の4500番の巨大なリールを使ってバス釣りをしていたのだ。
池でのバス釣りにこんなものを使うのは、軽自動車にフェラーリのエンジンを積んでるような無茶苦茶な組み合わせである。

ルアーを投げては巻いてを繰り返すのに、海用のこの馬鹿でかいリールはあまりに重い。
竿全体の重心も無茶苦茶な上、一回転のストロークが大きいので細かなアクションを加えるのにも向いてない。

「ちゃんとバス用のリール買えよ」という周りの声には聞く耳も持たず、「投げれさえすりゃ釣れるんじゃ」と、独自の印藤理論で実際に何匹かはバスを釣っていた。

しかしそんなある日、事件は起こった。
その日、印藤と俺はお互いすぐそばで釣りをしていた。
俺がルアーを代えるため糸を結びなおしていたその時、俺の背後から、突如

ボチャン!!!!!

「リ・・・リールがっ・・・!!!!」

という音と声がし、振り返ると水面をみつめたままフリーズしている印藤がいた。
水面に波紋が残っている。

無茶苦茶な組み合わせがたたり、投げるごとにリールを竿に固定するネジが徐々に徐々に緩んでいき、ついにリールが竿から外れ、水中へ落下してしまったのだった。

それにしても、「バ・・・バカな・・・」みたいな感じで、動揺して頭文字を詰まらせるというのは漫画などでよく見るが、リアルでそういうリアクションを見たのはこれが最初で最後だったかもしれない。


(だからいったのに・・・)

俺は呆れていた。
「いい機会じゃ。これを機にちゃんとしたバス用のリール買え。」
と言ったが、やはり印藤は聞く耳を持たず、手元の糸をたぐり寄せ始めた。
リールは水中に沈んでも、リールから出た糸は手元の竿へと繋がっていたのだ。
だがよりによってベールが開いた上体で水没してしまったため、糸をいくらたぐりよせてもリールは以前池の底。

リールが馬鹿でかいため100m以上は巻いていた糸を、結構長い時間ひたすら黙々とたぐり寄せる姿はなんとも馬鹿馬鹿しかった。




先日GWに久々に印藤と会ったとき、
印藤の「聞くところによると釣りばっかり行っきょるらしいな。」
という一言からこの話になった。

「今日その話されんかったら一生思い出さんかったわ。」
とえらく気にいったらしく、印藤はその後も麻雀をしながら何度も「リ・・・リールが!!!」と呟いていた。

リール1
当時のメインフィールドだった池は、誰が呼び始めたのか、「ギルの墓場」と呼ばれていた。
略して「ギル墓」。

リール2
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コメント
この記事へのコメント
ええ話や・・・
2009/05/20(水) 23:51 | URL | てら #-[ 編集]
リ・・・リールがっ・・・
ボートから俺も落とさない様にせんとな・・・
2009/05/21(木) 16:02 | URL | せきゆ #qy7Uhj02[ 編集]
>てらさん
え・・・えぇ話やっ!!!

>せきゆ
うん。ゴムボ用ロッドホルダーは買っといた方がえぇよ。
俺も一本中学時代からの相棒をダムの底に沈めとるからな。

魚を取り込むときが要注意やで。


2009/05/24(日) 20:50 | URL | fds #-[ 編集]
なんかfdsのブログのむかし話って
男の子話やけん私ほとんど知らんのに、
人を知ってるから言うてるのが想像出来て楽しい。
しかもいんぴが自分で気に入って何回も言うてるのが らしい ね 笑。

それにしても最後の画像の
[半年後ギルの墓場は埋められた]
ってのが妙に切ないです。
2009/05/25(月) 17:54 | URL | りえこ #-[ 編集]
ウケ狙いで書いたつもりだったけど切なかったかな?
まぁ確かにそう言われればこの当時は寂しかったな。

みんなで釣りしてたら作業服着たおっさんが来て、
「ここって何が釣れるん?」
みたいに聞いてきて、
「バスとギルです。あとナマズとかもいます。」
と答えたら
「へぇ~・・・。実はもうすぐこの池埋めるんやわ。」
とか言われてな。

当時の釣り場はほぼここしかなかったからそりゃ寂しかった。
これからどこで釣りしたらえぇねんって感じだったし。

結局それ以降はメインの釣り場を曽江谷川に移して、伝説のヌード風呂冒険記へと続くんやけどな。
2009/05/26(火) 21:29 | URL | fds #-[ 編集]
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