Lv.1
室戸岬へ行く途中、牟岐少年自然の家の近くを通った。

[牟岐少年自然の家→]

という看板を見た瞬間、頭の中のハードディスクがギュルギュルと起動し、しばらく忘れていた思い出が蘇ってきた。


牟岐少年自然の家に合同宿泊訓練に来たのは中学1年のとき、ちょうど広末涼子が「MajiでKoiする5秒前」とか「大スキ!」とかぶりぶりのアイドルソングを歌っていた頃だった。

あれは海で泳いだ後だったと思うが、夕方にグラウンドに全員が整列して、先生の話を聞いていた。
朝礼台の上に立っていたのは口山中学の知らない先生だった。

「え~・・・どうでしたか?・・・。楽しかったですか・・・?」

そんな感じで妙に間をおきながら話しているが、さっきから気になっていることがある。
その先生の上唇からものすごい血が流れているのだ。
どくどくと流れたその血は口を縦断し、下唇にまで滴っている。
きっと喋りながらも口の中には血の味が広がっていることだろう。

意味がわからない。
乾燥しやすい冬ならまだしも、なぜこの真夏にそんなに尋常じゃないほど流血しているのか。

そのとき、隣のクラスの印藤が、俯き具合で肩を震わせているのを見つけた。
印藤は委員長だったので最前列に立っており、俺よりさらによく見えていたことだろう。
うん。わかる。わかるぞ印藤。君はこういうのが大好物だったな。

「え~・・・では夕食は6時からなので、5分前行動で食堂にみんな集まるように!解散!!」

その一声で整列していた生徒たちが散り散りに宿舎への石段を登り始める。
俺は少し早足で印藤に追いつき、話しかけた。

「なぁ印ぴ、さっきの先せヴワッハッハッハ!!!!

我慢できなかったのは俺の方だった。
だが印藤は言わずともわかっていた。

「うん、くちびr――――――――っ!!!ッギッギッギッギッギッギ!!!

この奇妙な笑い方は印藤が笑いの臨界点を越えた時のみに見せる特異なものだった。
爆笑による腹筋と横隔膜のリズミカルな振動で、狭められた気管を空気が高速で出入りするその摩擦音。

脱力しそうになりつつ、のろのろと石段を登っている俺達の横を、「またあの二人やっとるわい」と呆れ顔でみんなが追い越し、「何なこの痛いアホどもは」と三島が横目で見ていた。おわり。
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コメント
この記事へのコメント
カオスや・・・・・。
2009/01/13(火) 22:34 | URL | フローター #-[ 編集]
めっちゃおもろい・・・
でもそんな先生おったとか全然記憶にない。
ってか気づいてすらなかったやも(損した気分)

笑い方の描写が絶妙です。
2009/01/14(水) 10:34 | URL | りえこ #-[ 編集]
>フローターさん
僕の少年時代なんてほとんどがカオスですよ。

>いわりえ
この印藤の笑い方、見たことあるかな?
文中でそれっぽく説明してはいるけども本当はどういうメカニズムで印藤が喉の奥からあの奇妙な音を出しているのかは謎です。

夜のレクリエーションでB組がやってた舞台「子豚と7匹の狼」を巡ってはリハーサル中に何の罪もない細川真理子が祐君に後頭部を蹴られたり、開演直前に三島も「3匹の子豚」をやるというモロ被りが発覚したり、本番中にソエのラリアットでKKがマジ流血して後で住友先生に「やりすぎなんじゃわ」と怒られたりといろいろあった宿泊訓練でした。
2009/01/17(土) 07:35 | URL | fds #-[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2009/01/17(土) 18:54 | | #[ 編集]
ん?なぜ管理人のみ表示の設定にしとんの?
たしかにそれもあったけど、他にもけいちーが家に帰りたいとスネたり木屋平中学の竹澤美由紀が怖い話をしてるときに土井君がヘタレやからだんだん俺に体をすりよせてきて気持ち悪かったりとかもあったよ。
あとモロ被りといえばA組がやった○×クイズも口山とモロ被りだったんやけどな。
2009/01/18(日) 09:24 | URL | fds #-[ 編集]
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